転々(映画)の無料動画フル配信｜DVDレンタルよりオススメ

映画、そして俳優というものの力と魅力を余すところなく出し切った傑作です。本作で、三浦友和は一皮むけて、本物の俳優になったと思います。

生涯見てきた作品の中で一番好きな映画です。当たり前のように暮らしている家族の大切さを改めて教えてもらいました。

三浦友和さんとオダギリジョーさんの主演二人が出している空気感が凄いですね。アルコールを入れて観ると泣いてしまいます。観なくてはいけない。多くの方に観て欲しい作品です。

時効警察の大ファンだったことから観賞。本作でも所々で思わず笑ってしまうのですが、その中にも心にしみる場面もあり、最高に素敵な映画でした。

借金取りから、借金をチャラにする代わりに一緒に東京を散歩することを提案された主人公は、その提案を呑み、この借金取りと一緒に散歩をすることになります。主人公からしたら数十万円の借金の悩みが消えるということで、非常に望ましい提案だったと言えますけど、冷静に考えて見れば散歩に付き合うだけで借金がチャラになるというのは、なんとなく信じられない提案にも思えてきます。ただ、実際に散歩をしていくと、借金取りの真意が明らかになっていくのです。この映画では、この借金取りのこれまでの生涯のような部分が、2人で散歩中に主人公に明かされると同時に、映画を見ている人間にも明かされるスタイルをとっているため、そこが非常に印象的であり、やや斬新に感じられて面白かったです。実際にストーリーが進んでいく中でこの借金取りの過去、そして今の思いなどが明らかになっていくのですが、これに関しては割と予想外の部分が多かったと思います。普通ならば人に言うのをためらうような犯罪が絡む事実もありましたから。しかし、人それぞれいろいろな人生があるんだなということを改めて思いますし、他人に対して、自分について話したくなるようなときもあるんだろうなという思いが芽生えてくる作品だったと感じました。

とても明るい声で会話しながら秋の東京の街を、淡々と、転々と歩いて行く。その道のりの上に、二人のこれまでの孤独や絶望がぷかぷかと浮かんで混じり合い、ひょうひょうとした、あきらめとも幸せとも言えないような人間味のつまった大きな風船がふくらんでいく、そんな感じの映画でした。見終わったとき、ちょっとさびしいけど、いい気持ちになりました。三浦友和さんの演じる福原という男に、オダギリジョー演じる竹村が振り回されながらも、人とのつながりの温かさを実感していく“旅”です。後半、竹村は福原のことを“おやじ”と呼ぶことになったり、せまってきた“別れ”に涙したりすることになります。決して普通ではない人しか出てこない映画ですが、不思議と、自分の生き方や自分の悩んでいること、映画を観るまでは意識しなかったけど何となく感じていた切なさなんかの理由が、ほわっと頭に浮かんできて、普通でないなあと思っていた人たちに共感してしまうのです。だから、二人の“散歩”の途中で、特に大きな事件は起きませんが、最後まで目が離せなくなります。（二人の“旅”の目的となる大事件は、この物語の初めに起きていたのです！）きっと、オダギリジョーさんの声で「幸せはじんわりやって来る」「日曜日の夕飯のあと最悪の時間がやって来る」などの短い言葉が語られると、当たり前の言葉が意味を持ってくるようで、本当に不思議でした。生きることは、どうしてもどこか孤独なものだけど、きっと人生、どうにかなるさ！

この作品は、三木聡監督ならではの独特なシュールな雰囲気のあるほっこりする作品だと感じました。オダギリジョーさん主演でドラマの「時効警察」タッグが作り出す哀愁漂う世界観には、映画を見終わったあとに人生観を見直すきっかけを与えてくれると思います。なぜ、借金取りであるはずの三浦友和さん演じる福原はオダギリジョーさん演じる大学8年生の竹村に東京散歩を依頼したのか、その答えが作品が進んでいくにつれて明らかになっていくさまを追っていくと、そう感じる理由がわかっていただけると思います。福原はこの散歩に何を背負っているのか、企んでいるのか、そうしたちょっとしたミステリー要素も含まれている作品で、ただ喋りながら散歩しているだけでないストーリーの展開には見ていて全く飽きが来ません。そして、更に注目して欲しいところが、三木監督作品ワールドです。三木監督の作品である、「時効警察」をはじめ多くのそこでのキャラクターや演出が作品の垣根を超えてふんだんに盛り込まれており、他の三木監督の作品を知っている人はより楽しめること間違いなしです。知らない人もこの作品を観たあとで他の作品を観ていただくことでそういった三木監督の遊び心が理解できるのではないかと思います。

「転々」　何が転々なのか。開始早々、話は転々と転がっていく。オダギリジョー演じる主人公の元へ、三浦友和演じる借金取りが乗り込んでくる。ここまでは、普通の展開。ここから、借金の話はどこへ行ったの？と感じる暇もなく、借金取りの事情、その奥さんの同僚たち（かなりネジが緩んでいる。職場は暇そうだ）、主人公の初恋の女性に謎の不倫相手、偽造された家族などが絡み合っていく。場所が転々。人間関係も転々。ストーリーはどこへ行く。借金取りと主人公の行き先・目的（人生も含む）は全く見えない。それぞれ生きていく為に（必要なさそうなのも含め）、様々な人間関係を作り、抱え、手放しながら生きていく。映画の中では、短い時間で切り取られた場面場面だが、そこへたどり着くまで、それぞれどういう道筋をたどってきたのだろう。描かれていない時間と場面こそ、濃厚な人間関係と人生があったのではないだろうか。主人公と借金取りとが一緒に過ごした時間は、ほかの人々と過ごした時間と比べとても短い。が、代わりに濃厚だ。こういった偶然のような出会いと刹那的な時間の共有でしか、分かり合えないものもあるのかもしれない。借金取りから、誰でもいいよと選ばれた主人公。でも、すべての出会いは偶然ではなく、必然だと思う。