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是枝監督の現在の司法制度というシステム化した現状に人間が人間を裁けるのかという所に注目して制作したらしく、難しいながらも見応えは凄くあった作品でした。

伏線や情緒に畳み掛けるシーンがたくさんあるにも関わらず、点を結び付けて線にすることが出来ない歯がゆさが良い。どんよりしてたけど面白かったです。

淡々と物語が進行していくものの、不思議と世界観に入り込める作品。役所広司さんと福山雅治さんの最後の方の掛け合いを見て、俳優の力ってすごいなって思いました。

とても是枝監督らしい映画で、カメラの映し方がおもしろかった。見終わったあとも、考えてしまう奥が深い作品です。

感想が難しい映画です……最初は単純に、謎解きサスペンスだと思って見始めたのですが、物語が進むに従って、違和感を覚えるようになりました。何かがおかしい……いや、おかしいものの元凶は分かっている。だけど、元凶の『彼』は至ってまともに見える。だからこその違和感であり、薄気味の悪さとでも言うべきでしょうか。違和感の元凶は主要人物の一人である、役所広司さん演じる三隅であることは間違いありません。殺人の罪に問われ、これから裁判にかけられようとしている男。以前にも強盗殺人罪で起訴され、30年の服役を経験した男。彼はとても真面目で物静かで、弁護士たちにも協力的に見えます。けれど、その言動は穏やかでありながらも一貫性を欠き、ふわふわと掴みどころのない煙のような存在に思えてくるのです。それなのに、三隅が嘘を言っているようには思えない。混乱や恐怖から、あやふやな発言を繰り返しているようにも見えない。彼はしっかりとした知性と理性を持ってそこにいるはずなのに、大きな穴がぽっかりと開いているだけのようにも感じられる……役所広司さんの演技力の凄まじさを思い知らされます。物語は終始、この三隅に登場人物の全てが振り回されているように思えました。直接間接に関わらず、何の変哲もないくたびれた初老の男に。それがこの映画の素晴らしさであり、同時に恐ろしさでもありました。モヤモヤと腹の底に何かがわだかまり……それを解消できるかできないかは、視聴者に問われる部分かと思われます。監督の是枝氏は、そうしたモヤモヤ感こそが狙いであるとコメントしているくらいなので、彼の思惑にしっかりと嵌められるのも一興ですが（笑）視聴後の爽快感は全く保証できませんが、ずしっと腹に残る重たさが印象的な映画でした。もちろん、良い意味で、です。

是枝監督の演出やそれぞれの役者さんの演技が光るすばらしい作品だったと感じました。まず、なんといってもこの映画の展開を大きく左右する三隅を演じられた役所広司さんは本当に見事でした。面会を重ねると供述が変わり、まるで人格が変わったかのような描写をとても見事に表現されていました。様々な捜査から三隅の印象について取れる証言もばらばらで、だんだん真実がわからなくなってくる感じは、見ていて恐怖すら感じます。福山雅治演じる重盛も翻弄される感じをとてもよく表現されていました。毅然とした態度で弁護に臨んできた信念みたいなものが少しずつ変わっていく様は、一緒に三隅に翻弄されているような重盛の心情に引き込まれていく感覚があり、物語に没入できます。ガラス越しに２人を重ねることで境遇や心境を寄せていく是枝監督の演出もさすがだと思います。この映画では、結局事件の真相はわからず、もやもや感が残ったまま結末を迎えます。ただ、真相をわからないまま死刑が確定することで、弁護した側に残る違和感や罪悪感のようなものを描いているのかなと感じました。「三度目の殺人」というタイトルの解釈をどうとらえるか、というのも映画の魅力の一つだといえますね。

殺人の前科を持つ犯人三隅は、新たな殺人により逮捕されます。本人の自供で死刑はほぼ確実でしたが、弁護を担当する主人公が事件を調査すると、動機さえも二転三転していく犯人に違和感を感じていきます。その違和感が何か、調べていく内に犯人の過去も知ることになるのですが、その過去の犯罪でも発言が二転三転していたことも分かってきます。さらに調査を続けると、三隅と言う犯人像が益々分からなくなります。犯人の一語一句、表情など細かい演技はさすが俳優さんです。物語りが進めば進むほど、この犯人の言葉の真意は何だろうかと、考えさせられるような作品です。言葉の意味をそのまま受け取ると単純なのですが、実際はそうではなく、その言葉に隠された本当の意味を考えると、とても奥が深いです。終盤で真相が分かってくるのですが、裁判の土壇場でも二転三転する犯人の発言には、最初から見ているこちらまでも混乱してしまいました。何が本当で何が嘘なのか、犯人の行動や発言の意味を見極めつつ話を見ていくことで、展開にのめり込んでいました。複雑になってくるこの展開には目が離せません。最後の最後まで目が離せない作品になっているので、目を逸らさないで考察しつつ見てほしい作品だったと思います。理不尽なことがまかり通っている現実を誰がさばくのか、最後の最後まで難しいテーマだったと思います。

映画『三度目の殺人』ですが犯人の三隅高司が、自白しているものの毎回言う事が変わるので振り回されると言う展開です。最初主人公の重盛はてっきり警察の人間と思っていたのですが、みていったら弁護士でした。重盛は出来る弁護士らしくて、今回の事件で同僚が助けを求めてるので仕事を受けた感じです。でもなんか拠点の弁護士事務所で歯切れ悪い態度としてたのが、『思ったよりマンションが高く売れない』と言ったりしてて同僚に突っ込まれてたりして本気なのか違うのかが謎なキャラクターだと思いました。この三隅の方ですが、途中から主犯が被害者の奥さん美津江で自分は実行犯といってくるようになっていって三隅の裁判なのに美津江が尋問されてる感じでした。でも被害者の娘の咲江が、父親から性虐待受けていて三隅が殺したのだと言ってきてこの事件は一体何が原因なのかがわからなくなってきました。しかも後半は殺していないと言ってきて、いやいやいやあんた序盤で殺して燃やしたやん！と突っ込みながら見ていました。三隅が二転三転する発言して行くのは何か意味があるのではと言う感じで、重盛は性虐待をうけた咲江を多分マスコミ的なソレから守るために自供を翻したのではと言う認識で話を進めああソレなら納得かもと思いました。しかしそれを三隅に問うても、肯定せずに終わったのでレビューで難解とされていたのがこれかとふに落ちました。

謎が謎を呼ぶ作品でした。被告人としてあがった三隅の供述が、聞くたびに二転三転する様子にとてもヤキモキしました。いったい何が真実で、何がウソなのか？考えれば考えるほどわからなくなってきますが、真実を知りたいという好奇心を刺激させられました。三隅が供述を一変させて、これまでの犯行を否認したときは、咲江を守りたい思いでいっぱいだったのか？それとも生まれながらの殺人鬼ゆえなのか？という二つの考えが頭によぎりましたが、結局それもわからずうやむやなままな状態で、振り回されている弁護人の重盛と摂津達に同情しました。また、キーパーソンとなる咲江がどれくらい事件にかかわっているのかも気になるし、咲江の母親も、咲江の父が咲江にしていたことを黙認かつ工場の食品偽装問題を隠しているという重大な罪があるのにも関わらず、そ知らぬふりを続けているところを見ると、三隅だけでなく彼らもまた共犯だと感じて憤りを覚えました。結局人間最後は「自分が一番かわいい」というのをよく表しているのが最後の法廷でのみんなの様子だったのではないかと感じます。また、最初こそ裁判に勝つことに意義を置いていて冷酷だなと思っていた重盛が、三隅との関わりで本当の真実を追い求め奮闘する姿に、段々と人間味を感じることができました。

この映画のタイトルが意味することは、もしかするとよくわからない人がいるかもしれません。それは犯人が犯した罪を考えると納得できます。罪は見えている部分だけが真実とは限らずどう必ずしも真実が追求されているとは限らないということです。殺人はいけないことですが、そこにどうしようもない闇がある場合に人は肯定してしまう可能性があるんじゃないでしょうか。弁護士は大きく証言を変えてしまった犯人の意図を掴みきれず困ってしまいますが、真実がわかってくるにつれて弁護をするというよりも犯人に同調していく感じがとても辛く感じます。ここは犯人を助ける事が仕事なのではないかと思いますが、ある人物が大きく関係しています。ただはっきりとわからない部分があるのも想像力を掻き立てていいと思います。つまり犯人の役所がどのように関わったのかが、ぼやけているからです。一般の社会でも結末はこうであれば全て丸く収まる時があります。誰かが傷つくのですが、その中で最も守りたいものは何かという事が重要なのです。そのためにストーリーをそういった方向に持っていく操作が、自然に行われちゃう場合があるのかなと思います。この映画は幸せな映画のような気がします。