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蟹工船(映画)の内容
映画『蟹工船』は、2009年7月に公開されました。
原作は、小説家・小林多喜二さんの1929年に発売された「蟹工船」。1920年代から1930年代にかけて流行したプロレタリア文学(労働者の過酷な状況を描いた文学)の代表作で、海外からの評価も高い作品です。
2008年頃の日本では「格差」が社会問題になっており、労働者の過酷な現実が注目されていました。そのため昭和初期に発売された「蟹工船」が、2008年に新語・流行語大賞でトップ10に入り再脚光を浴びて映画化となりました。
監督は「弾丸ランナー」や「疾走」でメガホンを取った鬼才・SABUさん。
主演の労働者のリーダーに松田龍平さん、労働者を酷使する監督に西島秀俊さんがキャスティングされました。そのほかにも、新井浩文さんや高良健吾さん、木下隆行さんなどが脇を固めています。
原作は昭和初期の作品だけど、労働環境の問題は現在にも通ずるところがあります。ストライキや抗議活動が頻繁に起こる世の中は、いい世の中とは言えないと思うけど、声を上げないといけない現実があるんだなと痛感した。
西島さん目当てで観ましたが、いつの間にか真剣に観ていました。話し合いが通用しないときには、行動を起こすしかないんですかね・・。行動が過激になれば、それはそれで危険だし難しい。
内容に注目された映画だけど、意外にいい俳優さんが出演してるんだよね。でもやっぱり松田龍平さんは別格でした。雰囲気のあるいい俳優さんです。
環境に慣れることは一番怖いこと。ある種の洗脳で、悪が悪と思わなくなるのは怖い。だから声を上げたこの男たちはかっこいい。
あらすじ
カムチャッカ沖で蟹を捕り、船内で缶詰に加工する蟹工船「博光丸」は、昼夜を問わず労働者を働かせていた。労働者を取り仕切るのは、労働者を奴隷のように扱う監督の浅川。この劣悪な環境での労働は、精神不安定になる者や体を壊す者を続出させる。
ある日、漁夫の新庄(松田龍平)は、自分たちの置かれた現実について悲観し、全員で自殺することを提案する。来世は金持ちの家に生まれ変わることを願い、首を吊ろうとする男たちだったが、死ぬ恐怖に耐えきれず命を絶つことができなかった。
過酷な環境から逃れられない男たちは、労働を続けるしかない。そんな中、新庄と塩田(新井浩文)は船から脱走する。極寒の海で、運よくロシア船の救出された二人は、自分たちの置かれる環境との違いに困惑していた。
二人は船内で中国人と出会い「自分たちの環境に不満があるなら、一人ひとりが立ち上がる必要がある」と教えられた。
博光丸に戻った新庄と塩田は、ロシア船で見た光景をほかの労働者たちに伝える。その話を聞いた労働者たちは、自分たちの置かれた環境を変えるために立ち上がるのだった。
見どころ
現在の社会問題への風刺
この映画では、不当性に立ち上がる労働者と対する権力者の考え方が描かれています。現在でも、権力者が弱者から搾取するという構図やブラック企業が問題視されているので、自分の仕事に置き換えて考える方も多いようでした。
劣悪な労働環境を忠実に再現
映画の舞台となった時代では、工船は渡航法が適用されずボロボロの船でも問題がありませんでした。さらに、仕事をする場所が工場ではなく船のため、労働法が適用されるのか非常にグレーで、ある意味無法地帯と化しています。
休みがない・風呂がない・体罰の常習化など、重労働をするに適さない労働環境がとてもリアルで、声を上げる男たちの気持ちがより濃く伝わるようになりました。
スタッフ
原作:小林多喜二「蟹工船」
監督・脚本:SABU
音楽:森敬
主題歌:Nico Touches the Walls「風人」
キャスト
漁夫・新庄:松田龍平
劣悪な労働環境を変えようと立ち上げる労働者のリーダー的存在。
浅川監督:西島秀俊
労働者を酷使する船上の監督。
漁夫・塩田:新井浩文
雑夫・根本:高良健吾
雑夫・清水:柄本時生
雑夫・久米:木下隆行(TKO)
雑夫・八木:木本武弘(TKO)
雑夫・小堀:三浦誠己
雑夫・畑中:竹財輝之助
雑夫・河津:滝藤賢一
雑夫・山路:山本浩司
雑夫・宮口:高谷基史
雑夫・大沼:木下春樹
雑夫・小池:佐々木一平
漁夫・石場:利重剛
漁夫・木田:清水優
漁夫・中井:岡田卓也
漁夫・末村:澤原崇
雑夫長:皆川猿時
役員:矢島健一
船長:宮本大誠
無電係:中村靖日
給仕係:野間口徹
中佐:貴山侑哉
釜焚き係:東方力丸
ロン:手塚とおる
ミヨ子:谷村美月
清水の母:奥貫薫
清水の父:大杉連
石場の妻:滝沢涼子
久米の妻:内田春菊
和尚:でんでん
畑の役人:菅田俊
久米家の通行人:森本レオ
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蟹工船(映画)の感想
俳優の西島秀俊さん目当てで観た映画です。題名は以前から知っていましたが、詳しいストーリー自体は作品を観るまでよく知りませんでした。実際の当時の時代背景や、当時の蟹工船がどれだけ過酷だったかということを初めて知らされました。蟹工船とは、名前通りカニの工船で、オホーツク海でカニを捕った側から船底で缶詰にしていく船内での生活はまるで奴隷の強制労働のようで、本当に想像を絶するような劣悪な労働環境です。働く男たちは皆貧しい環境で生まれ育ち、教育も受けず、自分の運命に諦めを持っています。そしてそれを監督する役の西島さんは独特な衣装でまるで海賊のようでした。男たちはみんなで自殺も考えお金持ちの家に生まれたいといいますが、結局断念。松田龍平演じる新庄と塩田が偶然助けられたロシアの船を目の当たりにしたことから、自分たちの船の労働環境に初めて疑問を頂き、集団実まで考えていた同僚たちにストライキを持ち掛けます。ここまで酷い労働環境は現代の日本ではほぼないとしても、ブラック企業で不当な労働にそれほど疑問を頂かず働いている人たちはいるのではないでしょうか。そんな人たちに観てもらいたい映画だと思いました。原作であるプロレタリア文学というものを読んだことはなかったけど、原作の小説や漫画を読んでみたいという気持ちになりました。
小林多喜二のプロレタリア文学「蟹工船」を映画化したもので、大変興味深く観ました。小林多喜二の最期は特効警察による拷問死という現代では考えられない死因であり、かなり衝撃を受けました。しかもこの「蟹工船」を執筆したことにより逮捕され服役経験もありました。映画にも描かれていましたが、人間扱いされていない労働者が雇用主にストライキを起こして何が悪いのでしょうか?現代から見れば、法律の抜け穴をずる賢く利用して貧しい労働者をこき使う雇い主なんて許される訳がありません。戦前の日本の異常さが浮き彫りに出ていました。労働者が権利を求めることが「赤化」つまりは共産主義者のレッテルを貼られ、逮捕されたのです。思想や言論、信教など様々な自由の中で育ってきた私には怒りしか生まれませんでした。貧しいのは罪なのか?なぜ、貧しさは輪廻するのか?たくさん考えさせられました。作者の小林多喜二の最期を思うとこの作品が何もかも自由を勝ち取った現代に映画化されたことは素晴らしいことだと思います。そして、何より今の時代に生まれたことを感謝します。しかし、現代においても「コロナショック」による雇い止めなど労働者と雇い主との理不尽な関係は報道されています。今後もこの問題は続いていくのかもしれません。
小林多喜二の原作は’29年に文芸誌『戦旗』に掲載されて、’53年に山村聰監督・脚本で映画化され、本作は’09年にSABU監督により再映画化されたものですが、戦前の北洋漁業で使用された加工施設を備えた大型船の中でのことを描いた映画です。このような船は「工船」であり「航船」ではないので、航行に適さない老朽船が使われていて危険で、また、工場でもないので労働法規も適応されない危険で過酷な場所だったそうです。企業などに所属しない出稼ぎ労働者を集めて使っていたことから、扱いはひどく、暴力や過剰労働がはびこっていたとのことです。本作でもそのような有様は描かれていて、当時の労働者も今の非正規労働者と同じく真面目で勤勉ですが現在と同じく権利意識が弱く、労働法規にも詳しくなく、ひたすら安くて便利な労働力として扱われる様が描かれています。演技に関しては、主演の松田龍平さんは迫力があり、セリフにも説得力がありました。西島秀俊さんは最初の方では悪役に合っていないのではと思わせましたが、話が進むにつれて、役柄にマッチしていっていました。それにしても日本の同調文化というものの恐ろしさをよく表現できていると思いました。それにしても、当時のロシアの船よりはるかに劣悪な状況だったことは意外でした。ストーリーが少し直線的すぎな感じがしたので、もう少し映像に語らせるようなところがあった方がよかったかもしれません。
画面が全体的に黒く、それでいて赤茶色がかっていました。その色味は無機質な印象で、労働者の苦労が淡々と伝わってくるように思いました。現代の日本では考えられない労働環境です。ここに描かれている先人たちの働きかけや行動が、今に結びついているのだと考えるとありがたいことです。もちろん、別の形での問題はありますし、その問題解決は難しいですが。時代は昭和初期ころでしょうか。オホーツク海で蟹を獲り、船内で加工して蟹缶をつくるのが蟹工船です。労働者として松田龍平、新井浩史、柄本時生、TKO、滝藤賢一などが出演しています。労働者を束ねる監督として、西島秀俊がいます。西島は他の船より多くの蟹缶を作り出すことだけを目的としています。そのために労働者に声を荒げて叱咤します。日本男子しっかりしろとか、もたもたするなとか、倒れた労働者へは仮病だとか。叱責することが生産性が上がると信じ込んでいます。松田龍平と新井浩史はロシア船に乗り込み、通訳の中国人と出会い、新しい考え方ができるようになります。境遇を嘆き、死ぬまで貧乏だという考えではなく、今、自分がどうしたいのか、という考え方です。松田のように舵を切りたいところですが、そちらへ進むにはまだ少し時間がかかるような気がしています。
映画『蟹工船』の前提として、原作小説の特徴を復讐しておこう。ここ20年に渡る不況を一因として、2007年ころから古典小説『蟹工船』の売上げが伸びているらしい。過酷な労働を強いられる労働者達の描写が、現代の労働環境と重なって見えるからだという。本映画の製作および興集もまた、現代社会において過酷な労働環境にあえぐ者に共感を得ているのだろう。映画の内容はどこかコミカルな雰囲気も伴うが、基本的に古典小説の内容に沿っており、過酷なノルマに伴う長時間労働、豚小屋のような部屋での生活をするという劣悪な労働環境、更には非人道的な懲罰の描写が頻発する。本作の魅力は何かといえば、ストレートに言ってしまうと「下を見られる」ことであろう。自分よりひどい状態の人間を見て、自分はまだましだと安堵できるという訳だ。原作小説はともかく、今回の映画が人気を集めた理由は、不遇な労働環境に身を置いている者が自分より苦しい立場にある者を暗に探してしまいがちな心理を突いているものと思える。あるいは、単に興味本位レベルで他人の不幸話に興味を持ってしまうといった、総じてネガティヴ且つ純粋な好奇心が手伝っているような気がしてならない。
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