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建造物の映し方はもちろんですが、時折り入るBGMとの相性が抜群で揺さぶられました。喫煙シーンで吸いたくなったのは僕だけではないはず。

建築物の紹介映画なんだけど、とにかくカッコイイし、素敵―！ってなります。誰かの心にズシンと来るデザインに仕上げのは凄いよね。本当に。

日常と環境と関係。小津安二郎イズムが現代に引き継がれた作品。先日、自分も映画と同じような境遇に遭いましたが、それを打ち明けて相談できる相手がいませんでした。でも、本作のおかげで何か打ち明けられた気持ちになれました。

建築と映画って愛称が良いですよね。静謐で構造的でバランスが良く、そして癒しの効果もある美しい作品でした

小津安二郎は素晴らしい映画監督ですが、なぜだか彼の系譜には優秀な映画監督が出てきづらい印象を持っていました。勝手な印象で恐縮なのですが。なので、この映画の紹介文の中に小津安二郎の文字が何度も出てきているのを見てちょっと不安だったのですが、この監督はどうやら“あたり”だったようです。他人をくじ引きのような言い方をするのは不適切だとは思いつつ、小津風を称するロクでもない作品をさんざん見てきた側からすると、やっと当たった！って感じだったので。小津安二郎に憧れて同じようなローアングル・固定で撮るとかそういうことじゃなく、映像の空気感の中に小津の精神みたいなものが染み込んでいる感覚。剣術で言うならば、流派を完全に自分のものにして使いこなしている感じ。モダニズム建築が作風と不思議に調和して構造的な美しさによって映像世界を作り上げているのが魅力的であり、この作品の強い個性であると言えるでしょう。この作品を見て小津と似ていないという意見もあるかもしれません。小津作品にとって日本の風景は欠かせないエッセンスであり、それがこの作品にはないし、手法としても特に同じ撮り方をしているわけではないからです。しかし、切り取った風景が違っていても、手法は真似していないのに、どことなく小津を感じさせる。これでこそ、本物なんじゃないかと。小津風に騙され続けてきた人は結構いると思いますが、そんな人にこそオススメです。ものまね芸人じゃないよ！やっと本格派がきたよ！って言いたいです。

対抗心や、やるせない感じ、そのような簡単ではない感情と真正面からぶつかりあおうとするポジティブな映画でした。建築のことについて詳しくわかりませんが、カメラをほとんど動かさない様子は、まるで映画を鑑賞している人たちを建築ツアーに誘っているような感じがして、あのカメラアングルはすごくステキでした。「建築物は癒しを与える」というところもなんとなく妙に納得しました。落ち着いたどっしりとした雰囲気で、静かにストーリーは進んでいきますが、それは決してつまらないと言うことではなく夢中になって見入っていくといった感じでした。友達というのは年齢差があっても、共感するところがあるから成立するし、本音でぶつかり合うことで信頼しあい心が通じるのだと思いました。「何が君を感動させたのか？」という場面で、ケイシーが本音を語ろうとする時に音が消え2人だけの空間のようになるところが印象的でした。割と大事なシーンだったからこそ、各々の思いなどがあるし、たぶん心に秘めておきたいような気持もあるのだろうなと思いました。それが伝わってきたし、どんな会話をしているのだろう、とつい想像してしまうような演出が見事でした。生き物ではない建造物がまるで感情がある生物のように見えてきたのは不思議でした。良い意味で後を引くでも爽やかな気持ちになる映画でした。