雨にゆれる女(映画)の無料動画フル配信｜DVDレンタルよりオススメ

主人公とヒロインに十分に感情移入でき、北野監督の「あの夏、いちばん静かな海」と通ずるものがあったように思いました。

こういった映画は意味がわからない展開に行きがちで、最後に失望することが多いのですが、本作は短い時間でしっかりと完結させてくれてます。また、凄く緊張感がたっぷりで怖かったですが、見応えのある作品でした。

市川美和子さんや永瀬正敏さん辺りが出演する昔にあったような雰囲気の映画で素晴らしかったでした。愛の形を見させてもらいました。

金属の冷たさと油臭さ。土砂降りの匂い。夏の湿気。こういう男は大好き。青木崇高さんが素晴らしい！これからの活躍にも期待です！

ジャジャン・クー、ホウシャオシェンといった巨匠が認めた音楽家、半野喜弘の初監督作品。音楽を担当してきた経歴の人が映画監督をするのは珍しい。有名なところでは、久石譲が『カルテット』を監督した例がある。映画と音楽の重要性は過去に散々語り尽くされてきた議題ではあるが、この映画もまた、音に対するこだわりは凄まじいものがある。映像の生っぽさと調和して、映画が独特のニオイを放っているかのごとく力強い表現に昇華されている。ただ美しいだけの映像にただ美しいだけの音楽を重ねても、こういう凄みは出てくることはない。ここのバランスが職人芸のごとく研ぎ澄まされていて、それだけでもどかっと重みのある映画をお腹いっぱいに味わった満足感がある。腹の下にしばらく残って劇場を出てもしばらく世界観から抜けられないあの感じ。こういう感覚を味わわせてくれたのは、久しぶりだった。スクリーン以外で見たときには、その凄みは幾分か半減してしまうんだろうなあとは思うが・・・。狂気や孤独、生きづらさを抱えた男女が、惹かれ合いながら、傷つきながら、秘密が紐解かれていく。そのストーリーも賛否両論が出るのは間違いのない、一筋縄ではいかない物語だった。それもまた、映画の質を大きく高めてくれている。この映画を見ると改めて、「映画とは総合芸術なのである」ということを実感できる。

作品の映像自体が暗く、所々見にくい箇所もありましたが、暗い中にも独特な映像の美しさを感じました。また、主人公演じる青木さんが映像にマッチしていて、影のある男をよく演じていたと感じます。健次がなぜ本名を隠して生活しているのか？謎な部分がたくさんある上、そこに転がりこんできた、こちらもまた素性のわからない女性・理美の存在が、ますます謎と好奇心を高めてくれました。まるでネコのように気まぐれに行動する理美と、無口でほとんど自分を語ることのない健次の二人が、全然違う性格なのに似た者同士にしかみえず、そんな二人がひとつ屋根の下で暮らしているのがとても奇妙に映りました。物語自体は盛り上がりには欠けますが、健次の正体や理美の真の目的がどういうものなのか？という点には好奇心をくすぐられ、この先がどうなるのだろう？というワクワク感を呼び覚ましてくれました。ラストに向かうまでに、健次の衝撃の過去と今までの行動、さらには理美の目的と正体がすべて一本に繋がったときは痛快でしたし、冒頭の意味深なナイフを火で炙るシーンの意味も理解できてスッキリしました。ラストの展開は、よくあるサスペンスドラマの結末と似たような感じで先が予想できてしまって少し残念でした。

物語の冒頭は、主人公の家の中がよく見えないほど暗い描写でした。その後、一緒に女性と暮らすようになって家は整い、明るくなります。今までほとんど話すことの無かった主人公も話をするようになります。謎の多い主人公と女性ですが、ふたりの隠された過去をすべて話すでもなく、似た匂いを感じ合ったのでしょうか。作中の音楽も素晴らしく、それがただの陰気なミステリーにさせていません。映像も、主人公が働いている工場での火のシーンなども美しく、心惹かれてしまいました。また、題名にもあるように何度もある雨の日のシーンは、まるで自分がその場所にいるかのような錯覚をさせます。雨の日がくるたびに、この映画を思い出してしまいそうです。このままお互いの秘密は明かさないで、幸せに生活していけるのではないかと思いましたが、やはりそうはいきません。ラストに向かって、ふたりの悲しい過去が明らかになっていきます。ストーリーはもちろんですが、映像、音楽、そして俳優の演技など、かなり手の込んだ作品だと思います。タイトルを見ると暗い鬱になりそうな映画ですが、主人公たちの心理描写に長けているので、純粋に彼らに幸せになってほしいと思える映画です。

主人公・久保川則夫が熱したナイフを自らの肉体に押し当てて、焼きを入れる衝撃的なオープニングです。名前と過去を捨てて死んだように生きる男を、青木崇高が武骨な表情を浮かべつつ寡黙に演じていました。勤め先でも必要以上にコミュニケーションを取ることなく、ただひたすらに作業に明け暮れる姿はサイボーグにしか見えません。メガネをかけて補聴器を装着していますが身体能力は思いのほか高そうで、視力と聴力の矯正をする必要があるのでしょうか。則夫が働く鉄工所に鳴り響いているリズミカルな金属音が、見えない追跡者を暗示しているかのようにも思えてきます。トラブルメーカーの同僚・下田から強引に押し付けられて、ある日突然にスタートする同棲生活にはドキドキです。見知らぬ女性とひとつ屋根の下で暮らすことになりながらも、ストイックな態度が崩れることがないのは流石ですね。ミステリアスなヒロイン・理美役に扮している大野いとも、静かな笑みを湛えていたかと思ったら一気に感情を爆発させるなど掴み所がありません。本当のことを聞かせてと徐々に迫ってくる理美自身が、果たしてすべて本当のことを語っているのかという心理サスペンスを堪能してください。